電動トゥクトゥクを日本で走らせる!人と違う選択を取り続けた後藤詩門が起業するまで−−卒業生インタビュー #1
Interview 2021/07/15
U23若手起業家育成プログラム『JOBS CAMP』卒業生インタビュー第1弾!
初回のゲストは、慶應義塾大学で大学生活を送る傍ら、2021年1月に株式会社eMoBiを共同創業。取締役CEOとして活躍する、後藤 詩門さんです。
JOBS CAMPに参加する前から起業を志していたという後藤さん。大学1年生から取り組みはじめた長期インターン経験は、実に3社にのぼります。
一見、目標に向かって着実に歩みを進めてきたように見える後藤さんの人生ですが、そこには人知れぬ葛藤や努力の数々が。今回は、そんな後藤さんが起業に至るまでの半生に迫ります。
U23若手起業家育成プログラム『JOBS CAMP』とは
キャリア教育支援事業『BEYOND CAFE』を運営し、累計6万人の学生をサポートする株式会社Beyond Cafeと株式会社サイバーエージェント・キャピタルが2020年8月に立ち上げた若手起業家育成プログラム。
未来の日本を牽引する起業家を輩出するために、U23の学生を対象にU30の若手起業家がメンターとなり、2ヶ月間のワークショップを行います。
▼過去メンター(※一部抜粋)
株式会社タイミー 代表取締役 小川 嶺さん
株式会社POL 代表取締役 加茂倫明さん
株式会社MiL 代表取締役CEO 杉岡侑也さん
▼第4期生募集中!
2021年12月24日(金)〜2022年1月21日(金)
※スケジュールは予告なく変更となる場合がございます
※応募多数につき予定を繰り上げて応募〆切とさせていただく場合がございます
※エントリーは下記公式サイトから
これまでの経歴を含め、自己紹介をお願いします。
慶應義塾大学商学部4年生の後藤詩門(ゴトウ シモン)です。
大学1年生から現在に至るまで、合計3社で長期インターンを経験しました。現在は、友人と共同創業した株式会社eMoBiの経営に集中するため、大学を休学して事業推進に努めています。
株式会社eMoBiは、「移動」を軸に「モビリティ事業」「エネルギー事業」「旅行事業」などを展開しており、自治体や民間企業と連携しながら電動トゥクトゥクの導入を目指しています。
本日はよろしくお願いします!
きっかけはタイ旅行だった!?大学生活の変化
トゥクトゥクといえば「タイの街中で見かける乗り物」という印象が強いのですが、あのトゥクトゥクが日本に……!?
そうなんです!
最近では、千葉県南房総市の観光協会や長崎県壱岐市などの事業者等と連携し、民泊施設へ電動トゥクトゥクの導入を進めています。また、2021年7月末には個人客を対象としたレンタカーサービスも開始予定です。
すでに自治体への導入も進んでいるんですね!後藤さんといえば、起業までに長期インターンを3社経験されています。それぞれどのようなインターンに取り組まれたのでしょうか。
スクール事業・保険・モビリティーサービス・新規事業創出など、いろいろな長期インターンに挑戦しました。
▼後藤さんのインターン時代から起業に至る遍歴
- 大学1年:秋〜2年生:春
- 株式会社フジテレビラボ
- プログラミングスクールの立ち上げに従事
- 株式会社フジテレビラボ
- 大学2年生:春〜夏
- 株式会社Warrantee(保険とITを組み合わせたインシュアテックベンチャー)
- 大学2年生:冬〜3年生:春
- ナイル株式会社
- 休養期間
- 自身が「何をしたいのか」を考える
- 大学3年生:夏
- XTech株式会社(2週間の短期インターン)
- 新規事業創出インターン『READY』1期生として参加
- モビリティ×広告に可能性を感じ、Uber Eats配達員に広告を掲載する事業立案に挑む
- XTech株式会社(2週間の短期インターン)
- 大学3年生:秋
- U23若手起業家育成プログラム『JOBS CAMP』参加
- 大学3年:冬
- 起業家コミュニティで知り合った友人2人と株式会社eMoBiを共同創業
- 電動トゥクトゥク利用をはじめとするモビリティ事業などを展開
経営者だった祖父の影響もあり、高校生の頃から漠然と起業に興味を持っていたため、インターンと並行して東京大学のインカレ起業サークル『TNK』でも活動していました。TNK出身の高橋飛翔さんが代表を務めるナイル株式会社が、新しくモビリティーサービス事業を始めると知り、同事業部で長期インターンを開始。
自分を見つめ直す期間を経て「モビリティ×広告」に可能性を感じた僕は、XTech株式会社の短期インターンに参加し、「Uber Eats配達員に広告を掲載する事業」を思い付きました。それからは、自分で考えた事業を形にするために奔走。その過程で『JOBS CAMP』にも参加しました。
大学1年生から長期インターンに積極的に参加されてきた後藤さん。大学入学前から長期インターンに挑戦すると決めていたのでしょうか。
いえ。大学入学当初は、長期インターンではなくサークル活動に精を出していました。大学1年生の夏頃、ある出来事をきっかけに気持ちが変化したんです。
何があったのでしょう?
僕はテニスサークルに所属していたのですが、夏合宿を終えた頃、当時の生活に一種の「飽き」を感じるようになって……。そんな時、同じ大学に通う友人2人とタイのパタヤへ旅行に行く機会があったんです。
他愛のない話から、ふと「大学に入って何したい?」という話に。「大学時代に何か大きなことをしたいね」と話すうちに、次第に友人も僕も気持ちが高まっていくのがわかりました。
この旅行をきっかけに、学生時代の時間の使い方に対する意識が変わったんです。
マイノリティを極めた先に見えてきた僕の進む道
まさか、海外旅行先の会話がきっかけで生活が変化されていたとは!帰国後は、まず何から始められたのでしょうか?
YJキャピタルとEast Venturesが起業家支援プログラム『Code Republicアカデミア』を開講すると知り、タイへ行った友人2人も一緒に1期生として参加しました。3ヶ月間のプログラム期間中は、事業案を作り、講師の方に壁打ちしては作り直しを繰り返し……。テニスサークルで練習に明け暮れていた日々から生活が一変し、ひたすらに事業立案と向き合う日々でしたね。
プログラムに参加した当初は友人と3人で起業しようと話していたのですが、講座を終えたタイミングで改めて各々の気持ちを確認した結果、「今は違う道を歩もう」ということに。
こうして僕は、いろいろなビジネスに触れるために長期インターンに参加するようになったんです。
後藤さんとお話ししていると「興味を持ったら、怯むことなくまずはやってみる」そんな力強さを感じます。行動を起こすときに大切にしている考え方や感情はありますか?
2つあります。
1つ目は「思いついたらすぐにやる」こと。2つ目は「周りの人と違うことをしたい」と思い続けていることです。
2つ目に関しては、僕の生まれ育った環境が大きく影響しています。
僕は岐阜県に生まれ、高校卒業までを地元で過ごしました。岐阜県に住む中学生の多くは公立高校に進学します。実際、僕が通っていた中学校でも学年の4分の1が公立の岐阜高校へ進学しました。そこで僕は、あえて岐阜北高校へ進むことを決意。大学進学の際も、僕の周りには国公立大学を目指す人が多いことに気づき、私立大学の慶應義塾大学に進学を決めました。
僕自身も気づかないうちに「人と違う選択」を重ねてきたように思います。幼い頃から、新しいことに挑戦する時にあまり恐怖を感じない性格だったこともあり、「思いついたらすぐにやってみる」ことも意識していますね。
JOBS CAMPは事業案をブラッシュアップできる場所
JOBS CAMP参加の背景と決め手はなんですか?
参加のきっかけは、株式会社サイバーエージェント・キャピタルの北尾崇さんのツイートをたまたま見かけたことです。TwitterでJOBS CAMPについてツイートされていて。
JOBS CAMPは、約2ヶ月間の若手起業家育成プログラムです。参加者は週に1度開催される講義に参加するのですが、毎週異なる講師がメンターとして登壇し、起業や経営に関するワークを含めた講座が開かれます。そのメンター陣の顔ぶれを見た時、すごく面白そうだと思って……!
僕が参加した第1期のメンターは、株式会社タイミーの小川代表や株式会社POLの加茂代表など、30歳以下で構成される合計7名の若手起業家の皆さん(※1)。すごく魅力的な方ばかりで、JOBS CAMPへの参加を決意しました。
(※1)メンターは変更となる場合がございます。
JOBS CAMP参加前から明確に「起業しよう」と考えていましたか?
そうですね!起業するタイミングや事業内容が決まっていたわけではありませんでしたが、いつかは起業しようと考えていました。
後藤さんがJOBS CAMPに参加された目的が気になります。
当時の僕が考えていた事業案に対するフィードバックをいただくことです。
JOBS CAMPに参加した時の僕は、株式会社XTechで新規事業創出インターン『READY』に参加中でした。そこで考えた事業案をJOBS CAMPに持ち寄っていたんです。
JOBS CAMPでは、講義に登壇される起業家に対し、参加者が考えた事業案を発表し、フィードバックをいただく機会が毎週必ずあります。起業を志す者として、現役の起業家から直接アドバイスをいただけるチャンスはそう多くありません。そのため、READYは「事業案を考える場所」、JOBS CAMPは「事業案に対するフィードバックをいただく場所」と僕の中で位置付けて参加していました。
なるほど!それぞれのプログラムの特徴を踏まえて有効活用されていたんですね。JOBS CAMP1期生として参加された後藤さんですが、正直、参加に対する不安はありませんでしたか?
なかったですね!
JOBS CAMPの参加を通して起業を目指す仲間との繋がりもほしいなと思っていたので、参加することで何かしら新しく得られるものがあるだろうと思っていました。
一歩踏み出すか踏み出さないか迷うよりも、まずは挑戦してみることが大事だと思っていましたね。
「起業家たるもの、一度掲げた拳を下げるな」
JOBS CAMPへの参加を通して、最も印象に残ったことを教えてください。
メンターの起業家の方々から、当時の僕が考えた事業案に対して直接フィードバックをいただけたことです。
特に、株式会社タイミーの小川代表と株式会社POLの加茂代表に事業案の壁打ちをさせていただいたところ、僕の事業アイディアに共感し、肯定してくださったことが嬉しかったですね。事業のマーケティング施策も親身になって一緒に考えてくださりました。
一生懸命考えた事業案を褒めていただけただけでなく、事業を前に進めるたのアドバイスまで……!それは嬉しいですね。後藤さんは、メンターの起業家に対してご自身の事業案を積極的に発表されていた印象があります。
毎週の講義時間は限られており、参加者全員が起業家の皆さんに自分の事業案を発表できるわけではありません。せっかく同じ時間を過ごすのであれば、他の参加者の事業案に対するフィードバックを聞くより自分の事業案に対して直接指導いただく方が、同じ時間を有意義に使えるなと。
JOBS CAMP参加中の学びの中でも、後藤さんの現在に活きている学びはありますか?
JOBS CAMPを主催しているBEYOND CAFEの代表のカルさん(代表の愛称)がおっしゃっていた言葉は、今も意識していますね。
「起業家は、ずっとファイティングポーズをとり続けろ」
JOBS CAMPで複数の起業家の皆さんのお話を伺いましたが、カルさんのこの言葉は、全員の発言に共通している起業家としてのスタンスだと思ったんです。起業家たるもの、常に攻める姿勢を忘れず守りに入らないこと。一度挙げた拳を下げないことの大切さを学びましたし、現在に活きていると感じますね。
JOBS CAMPに参加する前と後で、気持ちや行動の変化はありましたか?
起業家仲間に負けたくない気持ちが増幅しました(笑)。SNSを見ていると、参加者のみんなの頑張りが目に入るんです。プログラム参加中も卒業後も、常に意識する仲間でありライバルでもある。お互いにすごくいい刺激になっています。
奇跡のような出会い。僕の夢が現実になる時
株式会社eMoBiの創業に至った経緯を教えてください。
JOBS CAMP参加後、当時考案していた「Uber Eats配達員に広告を掲載する事業」を形にしようと1人で奔走していました。飲食店へチラシを配ったりTwitterでDMを送ったり。ありとあらゆる手法で営業活動を行なっていたのですが、なかなかうまくいかず……。
あの日も、いつものように渋谷の飲食店を歩き回りながら営業活動をしていました。すると、東京大学の起業インカレサークルTNKで知り合ったインド人留学生の友人から、1通の連絡が届いたんです。「モビリティ好きな友達がいるんだ。会ってみない?」と。
それはなんとも気になる連絡ですね。
そうなんです。「モビリティ×IT」に可能性を感じていた僕は、彼が紹介してくれた友達と会うことにしました。
いざ会ってみると、気が合うし、何より彼らの話がすごく面白くて!初めて会ったのは2020年の年末頃で、当時の日本は新型コロナウイルス感染症が猛威を奮っていたさなかでした。にもかかわらず、彼らは「東京オリンピックで電動トゥクトゥクを走らせよう」としていたんです。衝撃を受けました。「なんて面白いやつらなんだ」と。
なんと!まさか、この時の「彼ら」が……?
そうです!株式会社eMoBiを一緒に創業した仲間です。
彼らと2度目に会った日「一緒に起業しない?」と誘われ、共同創業を決めました。それまで1人で試行錯誤を繰り返していた僕にとって、仲間の存在は大きな支えになりました。会社登記や電動トゥクトゥクの輸入など、起業したての頃はわからないことだらけでした。仲間がいたからスムーズに乗り越えられたことがたくさんあります。インド人留学生の友人には感謝の気持ちでいっぱいですね。
素晴らしいご縁が繋いだ起業だったんですね。とはいえ、コロナ禍真っ只中での起業です。正直、不安はありませんでしたか?
不安しかなかったです。僕たちが輸入しているトゥクトゥクのほとんどが中国産のもの。本来であれば中国へ出向き、実際にメーカーの方とやりとりしたいところですが、コロナ禍においてはそれも難しい……。
トゥクトゥクを輸入してきただけでは実用に至らないため、まずは僕たちで製品の状態を確認したり、改良したりする必要があります。製品によっては、製品カタログに書かれている航続距離と実際に走れる距離が違っていることもあるため、入念なチェックが必要なんです。
コロナ禍という特殊な状況下において、僕たちが事業を展開する上で必要な準備を進めることは容易ではありませんでした。
それでも「今」起業することを選んだ後藤さん、不安が入り混じる中、起業を後押ししたものはなんだったのでしょうか。
僕たちの電動トゥクトゥクをほしいと言ってくださるお客さんが目の前にいたこと。これに尽きますね。
モビリティ事業に参画しようと思われた理由はなんですか?
幼い頃から車や飛行機・鉄道が好きで、これらの「好き」が転じてモビリティに興味が沸いたことが、最初のきっかけです。
実は、FinTechやSaaS領域への参入も考えたのですが、車や飛行機・鉄道と比べてどうも心が掻き立てられる感じがしなくて……。この時、「僕は興味を持てない領域に参入したとしても、きっと続かない。ならば興味を持てることをやろう」と思ったんです。
僕が純粋に楽しいと思えるものは何なのか。それがモビリティでした。
未来の起業家へ。僕が今、伝えたいこと
次々と新しいことに挑戦し続ける後藤さん。大切にしている考え方や指針はありますか?
「人と違うことをやる」。「やれると思った時にやる」。この2つです。
また、僕が座右の銘として大切にしている言葉も2つあります。1つ目は「死ぬ気でやれよ。死なないから」。2つ目は「ノーアタックノーチャンス」です。どちらの言葉も、この記事を見てくださっている方が起業を目指しているか否かにかかわらず、全員に当てはまる言葉なのでは、と思います。
僕がこれらの言葉に出会ったのは中学生の時。当時通っていた塾の先生がおっしゃっていたのですが、今でも僕の指針になっているほど大切にしている言葉です。がむしゃらに行動し続けていきたいですね。
後藤さんが考える「これから」を教えてください。
株式会社eMoBiとしては、2022年夏までに導入台数100台を目標に導入地域の範囲を広げていきたいです。具体的には、瀬戸内地方や沖縄などのリゾート地へ。より多くの方に電動トゥクトゥクの魅力を届けたいと思っています。
また、販路拡大と並行して組織の仕組み作りにも力を入れていきたいですね。現在は僕を含め3人の組織なので、経営しているというよりは全員がプレーヤーとなってがむしゃらになんでも取り組んでいる状態なのが実情です。しばらくは現在の状況が続くと思いますが、今のままでは会社としての長期的な視点を失ってしまいます。どうしても目の前の忙しい部分に目がいきがちで、近視眼的になるんですよね。
正直、現在のように電動トゥクトゥクを日本へ輸入し、お客さんに乗っていただくだけでは事業としてのスケラビリティに欠けると言わざるを得ないでしょう。「電動トゥクトゥクをどう走らせるか」を考えているのが現在の僕たちだとしたら、「電動トゥクトゥク事業のその先のサービスを創り出せる」ような1年を送りたいと思っています。例えば、トゥクトゥクと配送業や観光サイネージを絡めて、新たな事業展開を考えるのもいいですよね。
長期的な未来を意識して行動していきたいと思います。
JOBS CAMPに挑戦する未来の後輩へメッセージをお願いします。
「学生時代」という貴重な時間を無駄にせず、何事もやれる時にやることを意識してみてほしいです。サークル・部活・インターン……、やることはなんでもいいと思います。ですが、あなたが熱中して取り組めることをひとつ見つけて深く取り組む期間にした方が、より有意義な学生生活を送れると思うんです。
僕が3年前にタイムスリップして、当時大学1年生の僕に言葉をかけるとしたら、きっとこう言うでしょう。「目の前のチャンスを逃すな」と。
今でも、大学3年生以前の時間の使い方を変えたらよかったなと思うことがあります。それくらい、何かに挑戦するには早いに越したことはない。迷っている時間があったら、まずは行動してみることが大事だと思います。