JOBS CAMPでの出会いが人生を変えた。起業家志望の増田竜士と、京大医学部生の白川泰教が、4期生として出会い、起業に挑戦するまでーーJOBS CAMP卒業生インタビュー #10
Interview 2023/07/26
U23若手起業家育成プログラム「JOBS CAMP」卒業生インタビュー第10弾!
今回のゲストは、増田竜士さんと、白川泰教さんです。お互いJOBS CAMPの4期生として出会い、共同で事業立ち上げに挑戦。現在は、社会人向けのオンライン自習室サービス「DOSSY(ドーシー)」の立ち上げに奮闘しています。
小学生の頃から「人の役に立ちたい」という思いを持ち続け、それを叶える手段として起業を意識するようになった増田さん。開業医として働くお父様の背中を見て育ち、医学部に通いながら、周りの人がしていない挑戦がしたいとビジネスの世界に飛び込んだ白川さん。
住む場所もバックグラウンドも違うお二人が出会ったのは、2022年2月・3月に開催されたJOBS CAMPの4期。初対面で意気投合し、すぐに共同で事業づくりをスタートしました。
自分たちは「いいコンビ」だと話す増田さんと白川さん。お二人が起業を考えるようになった背景、JOBS CAMPでの出会いから、共同での事業立ち上げに至るまでのお話を伺いました。
U23若手起業家育成プログラム『JOBS CAMP』とは
パーソナルキャリアデザインサービス『BEYOND CAFE』を運営し、累計6万人の学生をサポートする株式会社Beyond Cafeと株式会社サイバーエージェント・キャピタルが2020年8月に立ち上げた若手起業家育成プログラム。
未来の日本を牽引する起業家を輩出するために、U23の学生を対象にU30の若手起業家がメンターとなり、2ヶ月間のワークショップを行います。
▼過去メンター(※一部抜粋)
株式会社タイミー 代表取締役 小川 嶺さん
株式会社POL 代表取締役 加茂倫明さん
株式会社MiL 代表取締役CEO 杉岡侑也さん
▼第7期生募集中!
募集期間:2023年7月4日(火)〜2023年8月11日(金)
開催期間:2023年8月30日(水)〜2023年10月28日(土)
※スケジュールは予告なく変更となる場合がございます
※応募多数につき予定を繰り上げて応募〆切とさせていただく場合がございます
※エントリーは下記公式サイトから
「ボケとツッコミ」のベストコンビで起業に挑戦
これまでの経歴を含め、自己紹介をお願いします。
増田さん:
慶應義塾大学医学研究科修士2年の増田竜士です。
僕は、幼い頃からアニメの主人公を目指しています。小学生の頃は、学年で一番身長が高かったにもかかわらず、成績も徒競走もクラス最下位で、ひどいいじめを受けていました。ことごとく「細長い系」のあだ名をつけられていて、例えば「うどの大木」とか、「東京スカイツリー」はちょっと嬉しいな、とか(笑)。
当時はすごくつらくて不登校になったこともあるのですが、大好きなアニメ・漫画・ゲームが僕にとっての救いでした。アニメの主人公たちは物語の中で世界を救っているじゃないですか。それを見ていると、「僕も人の役に立ちたい」という思いが僕の中に根付いていきました。
就活を進める中で、「人の役に立つにはどうしたらいいか」と考え、就職ではなく起業家を志すように。ただ、中学から大学までスポーツしかしてこなかったため、起業するために必要なことや、どんな事業をやるべきかが全く分からず、とりあえず上場企業の経営者にお話を聞きに行ったんです。そこで医療に関心を持ち、大学は経済学部に通っていたのですが、猛勉強して大学院の医学研究科に進学。同時に起業に向けて活動しています。
就活中に芽生えた「起業したい」という思いは、当時から強かったのでしょうか?
そうですね、「起業したい」とは明確に思っていました。「人や社会の役に立つためにはどうすればいいか」という問いを幼い頃からずっと持っていたからこそ、その手段としての起業への思いも強くありました。
今も、ビジネスがしたいというより、人の役に立つことがゴールで、そのための手段として、どれだけ多くの人を深く幸せにできるか、革新性があるかを大事にしています。その手段が起業でした。
なるほど。増田さんは起業を手段と捉えて取り組まれているんですね。白川さんも、自己紹介をお願いします。
白川さん:
アニメの主人公の話の後だと、あまりインパクトがないと思いますが(笑)。京都大学医学部6年生の白川泰教です。
僕は、医者になりたくて医学部に入りました。親が開業医でその姿を見て育ったので、医者という職業はかっこいいとずっと感じていましたし、常に答えがないことに挑み、最先端の技術を扱う面白さがあるだろうとも思っていました。
医学部では研究室に所属したり、医学部サッカー部に所属して週4日練習したり、一般的な医学部生活を送っていましたが、4年生の夏に転機が訪れました。海外留学に行く予定がコロナ流行のせいで無くなり、当時はサッカー部を引退したタイミングでもあったため、ものすごく時間ができてしまったんです。
この時間で何をしようか、何か面白いことはないかと思っていたときに、医学部の授業にスタートアップの経営者が来られる機会がありました。そのとき、「これは一般的な医学部生活を送っているだけでは一生出会わない世界だ」、「なんか面白そうだな」という感覚を持ったんです。
もともと好奇心が旺盛で、興味を持ったことはすぐやってみる、人と違うことをやりたいと思う性格だったこともあり、すぐにその方にアポをとり、直接お話させていただき、そのスタートアップ企業でインターンをすることになりました。
2023年3月まではその企業で事業開発に取り組み、社会人として基本のビジネススキルを身につけました。その会社は、メンバーが150人ほどでフェーズも進んでいるスタートアップの中では大きめの規模だったため、僕自身の裁量をもっと広げたいという思いから、次は10人ほどのもっと小さいスタートアップでインターンをすることに。
その過程でJOBS CAMPに出会い、起業がより身近な選択肢になったというか、僕自身が事業の1人目、2人目になりたいという思いが強くなりました。そこで竜士と出会い、一緒に事業をやっていくことにしました。
お二人で事業を立ち上げる中で、役割分担のようなものはありますか?
白川さん:
僕は今すぐ起業家として生きていくのではなく、まずは医師としてのキャリアを築こうと考えているので、その勉強やインターンと両立しながら取り組んでいます。竜士はフルコミットで動いてくれています。
増田さん:
性格や得意分野の観点では、僕が風呂敷を広げ、それに対してヤスが第三者目線でフィードバックをくれるという役割分担だと僕は思っているのですが……。ヤスがどう思っているかは聞いてみたいですね。
白川さん:
それには同意しますね。以前noteで「事業をやるときは、ボケとツッコミが大事」という内容を目にしたことがあるのですが、竜士はボケで、僕がツッコミみたいな感覚です(笑)。
ベストコンビですね。
白川さん:
僕自身、本当にそう思います。僕はある程度インターンや事業開発の経験があるので、「事業づくりはこうあるべき」や「普通はこういうものだ」というイメージが、良くも悪くも頭の中にできてしまっているのですが、竜士はいつも新鮮な視点でアイデアをくれるので、すごくいいバランスだと思っています。
そんな相手に出会えることはなかなかない経験だと思うので、すごく素敵ですね!
増田さん:
JOBS CAMPのおかげですね。
白川さん:
本当にそう思います。
自分たちの原体験をもとに、サービスをつくりたい
現在、どのような事業を立ち上げていらっしゃるんですか?
増田さん:
現在は、資格やスキル習得のために勉強したいけど、自宅で自習が捗らない、怠けてしまう社会人向けに、1on1型のオンライン自習室サービス「DOSSY(ドーシー)」を展開しています。勉強する内容、時間、熱量、会話の希望などをもとに、相性のいいユーザー同士をマッチングさせ、オンライン自習室に自動で入室できるというものです。
友達とZoomをつなぎながら勉強するイメージですね。僕自身、自宅で勉強が進まないと悩んでいました。でも、友達と一緒に勉強する予定さえ決めてしまえば、眠かったり勉強に気乗りしなかったりしても、その時間はZoomで自分を画面に映さなければいけないので、スマホを触らず机に向かえます。また、友達と勉強すると、会話も適度にあって楽しいので、勉強を継続できました。
この僕自身の体験を、身近に一緒に勉強する仲間がいない人でも、オンライン上で体験できるようにしようと思ったんです。
僕がこのサービスを使用したところ1日14時間ほど勉強できるようになり、他のユーザーの方からも、今までよりはるかに勉強時間が増えたという声をいただいています。
白川さん:
画面に自分自身を映すとき、バーチャルアバターを使うこともできます。知らない人と急に顔を合わせることに抵抗感がある人や、化粧などの身支度をするのが面倒と感じる人も多いので、お互いの顔や背景を映さなくてもいいようにしました。
アバターを使えると、気軽にサービスを利用できていいですね!もともと、お二人とも医療分野に興味をお持ちだったと思いますが、出会った頃から事業案も変化したのでしょうか。
増田さん:
そうですね。10個くらいは事業案にトライしてきたと思います。
JOBS CAMPでヤスと出会った当時、僕はニキビ専用のオンライン診療の事業案を持っていて、ヤスが興味を持ってくれたところから始まりました。それ以降はエンタメ、介護など、さまざまな事業を考えてきました。
その中で、自分たちの原体験をもとにサービスを作らないと、うまくいかなさそうだという仮説が出てきました。そう思うようになった背景は3つあります。
まず1つ目は、スタートアップはニッチでニーズが強い分野で事業をやらないといけないということ。伸びている市場に入ろうとしたり、大手企業を参考にして逆算的に事業案を考えたりすると、ニッチでニーズが強い部分を見つけるのは難しいと思うんです。ニーズが強い分野はすでにレッドオーシャンになっているし、ニッチな分野ではニーズを見つけることが難しい。
2つ目は、「欲しいと言われたから作ったのに、いざ作るといらないと言われる」という状態が発生したこと。これは、僕たちが業界知識を持っていないがゆえに、相手の発言の裏側にある意図まで読み取れていないことが原因でした。
例えば、ダイエットしたいと言っている人にダイエット商品を渡しても、すぐ使ってもらえるとは限らなくて。好きなものを食べたい、運動したくないなど、ダイエットしたいという発言の裏側にある真のニーズまで意識して商品を作らないと、愛用してもらえないですよね。自分たちが詳しくない分野だと、ユーザーのニーズの本質が掴めないし、知識がないために質問すらうまくできないという課題があったんです。
3つ目は、スタートアップをやると壁にぶつかって苦しいことも多い中で、突っ走る熱量を僕たち自身がしっかり持てるかどうかが大事だと思ったこと。
自分たちの原体験をもとに事業をつくれば、ニッチでニーズが強い分野を見つけやすく、ユーザーのニーズの本質を掴むこともでき、自分が信じることなら熱量を持って壁を乗り越えることもできると思います。
そのような経緯で、現在開発中のサービスは自分たちの原体験がもとになっているものです。
事業案が何度も変わりながらも、ずっとお二人で取り組んでこられたんですか?
増田さん:
そうです。本当にヤスには感謝しています。もともとヤスはニキビのオンライン診療事業に関心があったからジョインしてくれたのに、事業を何度変えていっても、ずっと2人で進んでこれていることは本当に嬉しくて。
僕の人の役に立ちたい、社会貢献がしたいというミッションや、風呂敷を広げるといったパーソナリティなど、抽象的な部分でお互いが共感し合っているからこそ、2人でやってこれているのかなと思っています。
白川さん:
そうですね。そういう抽象的な部分が一致してたというのはもちろんですが、事業が変わることに途中から慣れた部分もあります。
いろいろな経営者の話を聞いていると、事業のピボット(今まで取り組んできた事業とは別の事業に転換すること)を経験されている方はとても多いと感じます。ピボットするにしても、勢いややりたい気持ちだけあっても、メンバーはついていけないと思うんですが、僕たちは事業案を考えたら検証などの行動をある程度して、うまくいかない原因や次の仮説を特定した上でピボットをする合意ができていました。
僕自身も納得感を持ってついていけたし、事業を変えても一緒にやっていきたいと思っていましたね。
やはりベストコンビなんですね。現在、事業の進捗はいかがですか?
増田さん:
ニーズが本当に存在するかという課題検証が終わり、ユーザーが求めるアプリ像を明確にした上で、現在はノーコードで作ったアプリのプロダクト検証を進めています。現在のユーザー数は20人ほどですが、100人ほどまで増やしながらPMF(ユーザーのニーズを満たす製品を提供し、それが市場に受け入れられている状態)を目指していきます。
それから収益性を担保し、もっと長い期間をかけてスケールさせていくイメージです。
はっきりと見通しを立てられていて、さすがです。会社登記はこれからされるんですか?
増田さん:
事業がしっかりうまくいく見通しが立ったり、会社である必要性が出てきたりしたら、法人登記しようかなと考えていますが、今はしなくていいかなと思っています。
お金をなるべく使わずにやりたいんです。法人登記をするには、十数万円はかかります。事業自体は個人でもできますし、事業の検証をしてうまくいく確信が持てたときや、資金調達や他社との取引をするために法人化の必要が出てきたときに会社にすればいいと考えています。
起業のハードルは高くない。必要なのは、やる人と本気だけ
お二人がそれぞれ、起業を目指すようになった経緯を教えてください。
増田さん:
最初のきっかけは、親の影響ですね。父はお好み焼き屋をやっている飲食店経営者なので、「僕も会社員としてではなく、代表や経営者として仕事をしていくんだろう」という漠然としたイメージを、物心ついた頃から持っていました。
成長してから、経営者の中でも親の事業を継ぐパターンと自分が起業するパターンがあると分かってきて、冒頭で話したように革新性を持って人の役に立ちたいという思いがあったので、自然と起業という選択肢がはっきりしてきましたね。
白川さん:
僕の親も開業医なので通ずる部分はあるのですが、ビジネス関連の起業に初めて興味を持ったのは、4年生の秋頃に事業開発のインターンを始めてしばらく経った頃です。事業をつくるというのがどういうことか、ある程度理解してきたときに興味を持ちました。
事業開発のインターンをする中で、起業も楽しそうという感覚があったのでしょうか。
楽しそうという感覚はもちろんありましたが、それより「自分でもできそう」という感覚が大きかったですね。
経営者に実際にお会いしたりお話を聞いたりすると、心理的な距離が縮まることを感じていて。すごく偉大で遠い存在のように感じる経営者でも、意外と大きな壁や多くの苦しみを乗り越えてきていたり、人間味を感じられる要素もあったりして、イメージしていたよりも近い存在に感じられるんです。
何事も、「自分にもできそう」という感覚を持てるかは大事なことだと思っているのですが、会社や事業がどんな風に動いているのかがインターンをする中で見えてきて、自分も頑張ったらできそうと思えたのは、起業を意識する大きなきっかけでした。
なるほど。起業を意識してから実際に行動するまでは、どのような出来事や気持ちの変化がありましたか?
増田さん:
実際に起業しようと決意したタイミングは2回ありましたね。どちらも、「起業したいなら起業しながら学ぶのが最短距離だ」と思った出来事でした。
大学3年生の就活中、ある企業の説明会で、例え話として「プロバスケ選手を目指しているのに、とりあえず土台作りのために陸上から始めるのは正解とは言えない」といった話が出ました。
僕も起業に対して同じような考えを持っていたし、起業家と一社員の目線は明らかに違うことを就活をしながら感じていたので、その話を聞いて、ぼんやり考えていたことを言語化してもらった感覚があったんです。
内定者インターンをしていたときも、会社に入ると、僕が定義する成長ではなく会社が定義する成長を追求することになり、それは起業するには遠回りだと感じました。自分で事業案を考える、逆算的な思考ができるといった起業に必要な力ではなく、与えられたタスクをどれだけ高い質とスピードでこなせるかという、会社員として必要な力しか伸ばせないと感じたんです。
実際に起業しながら学んでいった方が、効率よく成長できるのではないか。人の役に立つというゴールが明確だったからこそ、すぐ起業した方がいいと考えました。
改めてその考えが確信として強くなったのは、あるエンジェル投資家に勧められて、長期インターンをやってみたタイミングです。2ヶ月ほどやって、やはりこれも起業するためには遠回りなのではないかと感じました。
事業案を実現して伸ばすという部分は、会社に入って学べることがたくさんあると思いますが、成功する事業案をつくる部分は再現性がないと思っていて。それなら、起業にまつわる知識をある程度は持った上で、確率論的にはとにかく自分で事業案を多くつくった方がいいと思うんです。失敗しながら学んだほうがいいと。
それ以降は、起業家になるという目標を持っている以上、会社に入る意味は無いと確信していますね。
白川さんはどうですか?
白川さん:
実際に起業しようと思った一番のきっかけは、やはり一緒にやる人が見つかったことですね。僕は起業家一本でやっていきたいわけではなく、あくまでも医者を目指していて事業にフルコミットはできませんが、そんな状態の僕であっても一緒に事業にチャレンジしてくれる人と出会えたのは、起業に挑戦するにあたって大きい出来事でした。
また、そもそも起業自体のハードルをそんなに高いものだと思っていないですね。
会社を設立することをゴールとしているわけではなく、人の役に立つ事業を作りたいだけなので、それならコストや責任もそこまで伴いません。やる人がいて、継続する本気さえあればできると思っています。必要なものが揃ったからやっている、という感覚です。
「起業」と聞くと、すごそう、難しそうというイメージを持つ人も多いと思いますが、お二人は事業をつくるのは難なくできることと捉えているんですね。
増田さん:
そうですね。僕たちはこの1年半ほどの間に約10個の事業案を潰していますが、生活費を除けばおそらく合計5万円も使っていないですね。例えばアプリ開発も、外注したら150万円以上かかると聞きましたが、結局自分たちでノーコードで作ったら1万円以下で済みました。
起業するといっても、お金をかけずにできることがほとんどだと思っていますし、個人的にはむやみやたらに資金調達する必要もないと思います。
起業したいけど勇気が出ない人にとっては、背中を押される話だと思います。ところで、就活をやめる決断や起業する決断に、ご自身の中での迷いやご両親からの反対はなかったのでしょうか。
増田さん:
それはありました。親には怒られましたね。親も僕も、慶應義塾幼稚舎からずっと慶應育ちで、周りは大手企業に就職する人ばかりという環境でした。
体育会系の人は特に大手志向の風潮が強く、ラクロス部の同期40人ほどの中で、ベンチャー志望で就活していたのは僕一人だけ。親には起業どころか、就活ではベンチャー志望というだけでも「社会を舐めている」と怒られました(笑)。
僕自身の迷いは全くなかったです。人の役に立つという人生の目的や軸をしっかり持っていたので、誰に何を言われても絶対に起業するという明確な意志がありました。
でも、迷わず就活をやめる選択ができたのは、実家が飲食店を経営していて、もし起業に失敗しても、最悪継ぐこともできるというセーフティーネットがあったおかげとも思っています。
親には怒られましたが、今はすごく応援もしてくれています。いい親に恵まれたなと感謝しています。
白川さんはどうでしたか?一般的には、実家が開業医なら子は後を継ぐものというイメージもあるかと思うのですが。
白川さん:
実は、小さい頃から「医者になって継いでくれ」と言われたことは一度もないんです。もちろん継げば親は喜ぶだろうと思いますが、そういう固定観念的な思想は全く持っていないと思います。
もちろんなんでも好き勝手にやっていいわけではないので、僕がちゃんと期待値調整のようなことをするのも大事だと思っています。例えば、留年や休学はしないとか、医師免許はちゃんと取るとか。最低限やるべきことはやった上で、プラスアルファの活動をする分には、怒られたことも反対されたこともありません。
JOBS CAMPでの出会いが人生を変えた
JOBS CAMPは、どこで知り、なぜ応募されたのでしょうか。
増田さん:
僕は友達からの紹介で知りました。
僕はもともと、目的が明確でないと動き出さないタイプだったのですが、ちょうどその頃に大学が主催するビジネスコンテストに出たとき、ランダムな学び、想定していなかった学びが成長につながるという新たな気づきを得られたんです。
そのタイミングで、まさにランダムな学びがありそうなJOBS CAMPに誘われたので、これもご縁だと思って参加しました。
白川さん:
僕も、同学年の医学部の友達が教えてくれて知りました。その友達も僕たちと同じくJOBS CAMP4期に参加しています。
結果的には、JOBS CAMPで出会って一緒に活動されていますが、共に事業に取り組む仲間を見つける目的は当初からありましたか?
白川さん:
参加した当時は、仲間を見つけたいとは全く思っていませんでしたね。
登壇される起業家のお話を聞くことが一番の目的で、起業に関心がある同世代の人って、どんな人なんだろうという関心もあって参加しました。
JOBS CAMPがお二人の初対面だったと思いますが、お互いの第一印象はどんなものでしたか?
白川さん:
JOBS CAMPに参加すると、まずSlack(オンライン上のコミュニケーションアプリ)で自己紹介するのですが、僕の自己紹介にまず竜士が反応して返信をくれたのが最初の接点でした。
起業に関するコミュニティでは医学部生の存在は珍しいと思うのですが、楽しそうに絡んできてくれて、社交的な人なんだなと思ったのが第一印象ですね。
増田さん:
今の話を聞いて思い出しました。当時は、「医学部で起業するって意味がわからない!お医者さんになるんじゃないの?」みたいなことを思いましたね(笑)。医学部という属性だけで特殊だったし、面白いと思ったのが第一印象でした。
実際に喋ってみると、ヤスのスペックの高さに驚きました。かっこいいし、勉強もすごくできるし、ビジネスに関わるようになったのは最近だと言っていたのに、明らかに持っている知識量が今まで会った社会人の中でもずば抜けていて、率直にすごいなと感じましたね。
僕はあまり興味関心が新しいものに移らないタイプなので、ヤスの知識欲の高さ、そして興味を持ったものに対する情報収集力や行動力の高さを尊敬しています。僕にはないものを持っている人だと感じました。
そんな出会いから、どういう経緯で一緒に事業をやることになったのでしょうか?
増田さん:
ヤスがオンライン診療のサービスを提供する会社でインターンをしていると他の人から聞き、当時僕はニキビ専用のオンライン診療サービスをやろうと考えていたので、びっくりしたんです。僕の事業案にフィードバックをしてもらうためにヤスに話したら、関心を持ってくれて、一緒にやってみたいと言ってくれたのがきっかけでした。
白川さん:
竜士の事業案を聞いたとき、当時僕自身がオンライン診療で課題に感じていた部分を解決できそうなものだったし、うまくいきそうだと感じたんですよ。
インターン先の事業と同じ領域の事業案でしたが、その創業者の一人とお話して、「(並行して竜士の事業案に取り組んでも)全然いいよ」と言われていたので、竜士に「一緒にやろう」と声をかけました。
やりたいことがお互いぴったり一致したんですね。JOBS CAMPに参加して、一番印象に残っていることはなんでしたか?
増田さん:
一番は、やはりヤスに出会えたことですね。明らかにそこから人生が変わっていったので。
白川さん:
僕にとっても、一番大きい出来事は、もちろん竜士との出会いですね。
あえてそれ以外を挙げるなら、先ほども話したように、起業家という先を行く存在と心理的距離が縮まったことで、自分でも起業できそうだという感覚を持てたことはよかったです。
もちろん経営者のお話の内容自体もためになるものばかりでしたが、どちらかというと内容というより、彼らのマインドや情熱、苦労を乗り越えてきた経験などに触れられたことが、参加してよかったと思っている要素です。
ランダムな学びとランダムな学びが、自分を革新的に成長させる
現在事業を立ち上げる中で、JOBS CAMPでの学びが活きていると感じることはありますか?
増田さん:
多すぎるくらいありますね。起業家の講義とワークショップを通して、毎回5個以上は新しい学びがありましたし、それを常に事業に反映させて血肉にしてきたと思っています。正直、学びが多すぎるからこそ、これといった特定のものを挙げるのは難しいのですが……(笑)。
会社や事業のミッションの掲げ方に関して、特に記憶に残っている内容がいくつかあります。
D2C寝具ブランド「NELL」を運営する株式会社Morght代表・土井さんのお話の中で、「今後100年にわたって残る提供価値をミッションに据える」といったものがありました。僕自身の中に落とし込んだ解釈なので、正確にこう仰っていたかは怪しいのですが。
僕は、有名になりたい、お金を稼ぎたいなどの個人的なエゴが全くなく、あくまでもどうすれば事業が伸びるかだけを考えているんです。そこで、カスタマーが求めるものを提供価値として抽象化し、100年後も残るようなミッションに据えれば、ミッションを実現するためのメンバー全員にとって共通の判断軸ができる。だからこそ何をミッションに据えるかが大事、という話はすごく勉強になりました。
その話に関連して、別の方からの、名声やお金など自分のエゴを掲げて起業してもうまくいかないというお話も記憶に残っています。類は友を呼ぶというように、同じような自分のエゴを大事にする人がメンバーとして集まってくるので、業績が伸び悩んだり壁にぶつかったりしたときに離れていってしまうという教訓です。
ミッションに何を据えるかや、経営者としてミッションを語り続けることの重要性は、現在も強く意識しています。
起業家として多くの大事な学びがある環境だったんですね。
はい。さまざまなジャンルの起業に関するお話を聞けて、まさにランダムな学びが多く、価値があったなと思っています。
また、カルロスさん(※JOBS CAMP運営元の株式会社Beyond Cafe代表)が「講義をした起業家さんに直接お声がけしてもいいよ」と言ってくれて、個別で事業案の壁打ちをさせていただく機会があったのも、学びにつながりました。
その起業家の方と何のつながりもない状態でいきなりDMを送っても、お返事をいただけないケースもあると思いますが、JOBS CAMPに参加したからこそ快く相談に乗っていただけたので、ありがたいです。
白川さん:
僕は先ほどもお話したように、経営者の生の声を聞けたことがよかったと感じているのですが、同世代の仲間とディスカッションする機会も、すごくためになったと思っています。
経営者のような僕たちより上の目線でビジネスを捉えている人ではなく、同じ目線の同世代と、ビジネスについてディスカッションする機会は、特に医学部の中にいると得られないものです。さまざまな考え方に触れられた経験は、現在にも活きていると思います。
増田さん:
ワークショップで、起業する中での自分の特徴や役割分担を考えて伝えるものなど、僕も記憶に残っていますね。
最後に、起業に興味がある学生など、未来のJOBS CAMPの後輩に向けてメッセージをお願いします!
増田さん:
起業に関心があり、周りに一定の成果を出している起業家がいないのであれば、JOBS CAMPには絶対に参加した方がいいと思います。そこには自分を革新的に成長させるような、ランダムな学びがあるはずです。さらに、僕が同志に出会えたように、ランダムな出会いもある場所です。
僕は、自分の想定している範囲内には絶対に大きな成長はないと思っています。「そんなことがあるんだ!」という驚きがあったときに革新的な成長ができるので、ランダムな学びと出会いに投資する価値はあると思います。
白川さん:
僕も今の竜士の話に共感しています。
基本的に、部活動、インターン、アルバイトなど、大学生活で経験することは、長い期間にわたって一定のリズムでやっていくものがほとんどである一方で、JOBS CAMPは限られた期間、濃い濃度で、ある意味非日常な環境に飛び込める機会だと思います。
こんなに素晴らしい経営者の方々からお話を聞ける機会も、同世代でビジネスを考えている人が一堂に集まる機会も、なかなかないものです。それこそランダムな出会いや気づき、学びが得られるという点では、他にはない環境だと思います。
ある程度ビジネスの世界を知らないと参加しづらいと思うかもしれませんが、少しでも関心がある人にとっても、ビジネスの経験がある人にとっても価値がある経験だと思うので、おすすめしたいです。
増田さん:
それこそ僕は、事業案を考えたことがあるだけで、ビジネスの経験はゼロという状態で飛び込みましたが、何も困ることはありませんでした。そんな僕でも、たくさんの学びを得られて本当に良かったと思っています。
「やったことがないからやめとこう」という選択は、おすすめしません。むしろ、何もわからない状態という人こそ、飛び込んでほしいと思います。
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