「挫折も失敗も山ほど経験した」20歳の起業家・黍田龍平が語る “ ここからがスタート” の深い意味−−JOBS CAMP卒業生インタビュー #6
Interview 2021/11/17
U23若手起業家育成プログラム『JOBS CAMP』卒業生インタビュー第6弾!
今回のゲストは、若干21歳にして事業立ち上げに3度挑戦!「ありがとう」を気軽に伝えるデジタルチップサービス『Respo(リスポ)』を通じて、感謝資本主義社会の実現を目指して奮闘する黍田 龍平さんです。
小学生と中学生の頃の原体験がきっかけとなり、人の意思決定を誘導する「空気」の存在に問題意識を抱くようになった黍田さん。最近では大手メディアに取り上げられ起業家として順調な道を歩んでいるかに思える黍田さんですが、「僕の人生は挫折続きだった」と言います。
「最後まで自分のことを信じてほしい」と呼びかける黍田さんが大切にしている覚悟とは。そして、Respoを通して実現したい感謝資本主義社会とは一体なんなのか。
黍田さんが人生において大切にしていることを伺いました。
U23若手起業家育成プログラム『JOBS CAMP』とは
キャリア教育支援事業『BEYOND CAFE』を運営し、累計6万人の学生をサポートする株式会社Beyond Cafeと株式会社サイバーエージェント・キャピタルが2020年8月に立ち上げた若手起業家育成プログラム。
未来の日本を牽引する起業家を輩出するために、U23の学生を対象にU30の若手起業家がメンターとなり、2ヶ月間のワークショップを行います。
▼過去メンター(※一部抜粋)
株式会社タイミー 代表取締役 小川 嶺さん
株式会社POL 代表取締役 加茂倫明さん
株式会社MiL 代表取締役CEO 杉岡侑也さん
▼第4期生募集中!
2021年12月24日(金)〜2022年1月21日(金)
※スケジュールは予告なく変更となる場合がございます
※応募多数につき予定を繰り上げて応募〆切とさせていただく場合がございます
※エントリーは下記公式サイトから
これまでの経歴を含め、自己紹介をお願いします。
株式会社リスポ 代表取締役CEOの黍田龍平(きびたりゅうへい)です。
鹿児島県に生まれ、祖父も父も経営者という家庭で育ちました。小学生と中学生の時の2つの出来事がきっかけとなり、人々の意思決定を誘導する「空気」に興味を持つように。株式会社リスポは僕の原体験から感じた問題意識を元に生まれました。
「優しいお金の流れを創る」をMissionに、気軽に「ありがとう」を伝える接客業向けの投げ銭サービス「Respo(リスポ)」を展開しています。いわゆる、米国にあるチップを渡す文化がDX化した事業です。
本日はよろしくお願いします!
ありがとうを伝えるデジタルチップサービス『Respo』とは
社名の「リスポ」は初めて聞く単語ですが、どのような想いが込められているのでしょうか。
「Re support(リ・サポート)」と動物の「リス」を掛け合わせて「リスポ」と名付けました。「全ての働く人に幸せを運ぶサービスでありたい」という想いを込めました。
実は、リスは「幸せを運ぶ動物」と言われており、「Re support」には「再び支援する」という意味があります。
なるほど!だから会社のロゴもリスがトレードマークになっているんですね!
そうなんです!
現在は接客業向けの投げ銭サービスを展開されているそうですが、具体的にどのようなサービスなのでしょうか。
気軽に「ありがとう」を伝えるデジタルチップサービスとして、都心の美容室やタクシー会社・飲食店を中心に利用いただいています(2021年8月取材当時)。
美容室の場合、卓上にRespoのQRコードが印字されたポップなどを設置いただいています。美容室を利用したお客様は、次の手順で手軽に「ありがとう」を伝えることができます。
① ポップのQRコードを読み取る
②「誰に感謝を伝えるのか」を選択
→ ありがとうを伝えたい美容師さんを選びます
③ 「コメントを送る」または「チップを送る」を選択
→ お礼のメッセージを伝えるか、チップを送るか選びます
④「チップを送る」を選択した方は、チップの金額を選択
なんと便利な……!顔を見てお礼を伝えるのが恥ずかしい時も、これなら気軽に「ありがとう」を伝えることができそうですね!チップを送るかメッセージを送るか選べるところも嬉しいです。
そう思っていただけて僕も嬉しいです!よく、「米国のチップ文化を日本に広めようとしているサービスなのか」と誤解されるのですが、そうではなく「感謝」や「優しさ」を拡張させたいと思っているんです。
といいますと……?
大昔、人々が物々交換で感謝を伝え合っていた頃は、モノが「ありがとう」を伝える道具でした。それが次第にお金に変わり現在に至りますが、本来、お金は「感謝を伝えるための道具」だと思うんです。
なるほど。
そう考えると、チップであれメッセージであれ、お礼を伝えられる手段のひとつとしてRespoが介在できたら嬉しいな、と。
意思決定を誘導する「空気」がもたらす影響
黍田さんがRespoを創業された根幹には、人々の意思決定を誘導する「空気」に対する問題意識があるそうですね。人生最初の転機は小学4年生の時に訪れたと聞きました。
はい。交通事故に遭ったことがきっかけで、後天性相貌失認症になったんです。人の顔と名前が一致しにくく覚えられなくなる病気なのですが、入院先へお見舞いに来てくれた友達の顔もわからなくなってしまって……。この時、世界と僕との間に突然壁ができた感覚を味わいました。僕は大きな社会でたった一人で生きていくのかな、と。
そんなことが……。
孤独を噛み締めていた時、入院先で流れていたとあるテレビCMが目に留まったんです。
どのようなCMだったのでしょう。
サンタさんが眠っている子どもの枕元にクリスマスプレゼントを置いている、そんなCMでした。ただそれだけの映像でしたが、当時の僕はなぜかすごく救われた気分になって……。感動しました。この素敵なCMの製作者を父に尋ねたところ、電通という会社が製作していると教えてくれたんです。
この時初めて将来の夢を意識しました。「人を救える広告の仕事がしたい」と思いましたね。
当時の黍田さんが抱えていた孤独感を和らげるような、そんなCMとの出会いが将来の夢にに繋がるとは感慨深いですね。次なる転機は中学生の時だったそうですが、何があったのでしょうか。
同級生の女の子がいじめられていたのですが、僕は最後まで彼女を救うことができませんでした。この時教室を支配していた空気こそが人の意思決定を誘導する「空気」だったのではないか、と僕は思っているんです。
例えば、誰かが「いじめはなかった」と言えばなかったことになり、誰かが「いじめはあった」と言えばあっことになるような、一人または大多数の意見によって真実さえもねじ曲げられてしまうような……。
人の意思決定を誘導する「空気」とは、つまり、同調圧力に近しいものと言い換えられるのでしょうか。
近しいかもしれないですね。僕も当時の教室を支配していた空気に飲み込まれていたように思います。結果的に、いじめを受けていた女の子は転校することに。
目の前で辛い思いをしている人がいるのに、何もできなかった僕自身を許せなかったのでしょう。僕は笑ってはいけない、楽しんじゃいけないんだと思い込んでいました。懺悔の気持ちに近いかもしれないですね。
そんなにも思い詰められていたんですね……。
人の意思決定を誘導する「空気」の存在を初めて認識してから2年後、高校1年生になった僕は、新たな出来事をきっかけに再び「空気」の存在に問題意識を抱くようになりました。
どのような出来事があったのでしょうか。
小学校2年生の入院生活で見たCMをきっかけに広告に興味を持つようになったとお伝えしましたが、そのCMを制作したとある企業に勤務する社員さんが過労死自殺したというニュースが目に飛び込んできたんです。
当時の僕は「いつか電通社でクリエイティブに携わりたい」と思っていたので、理想の職場で過労死自殺された方がいるという事実を受け入れることができませんでした。
私も覚えています。当時、衝撃的なニュースとして大きく取り上げられましたよね。
たまたま父の知り合いが電通社員さんだったため、話を聞きに職場を訪ねました。すると、電通社には「死ぬまで働くことが当たり前」という空気が存在していると知ったんです。
この時、中学生の頃に感じた「空気」の記憶が頭をよぎりました。学校であろうと職場であろうと、同様の空気はどこにでも存在しているのだと。学校であれば「転校」という方法で空気から逃れることができるかもしれませんが、ひとたび社会に出れば、生活や家族の存在などが影響してそう簡単には抜け出すことができません。
こうして僕は「もう二度と空気の存在がきっかけで大切な人を失いたくない」と思うようになりました。この頃の経験が、現在も事業を動かす原動力になっていますね。
「なんとかしたい」行動し続けた日々
「人の意思決定を誘導する空気」の存在に違和感を覚えた黍田さんですが、いきなり現在のような事業を起こしたわけではないそう。まず最初に起こした行動はなんだったのでしょうか。
高校3年生の頃、友人2人と一緒に教育団体を立ち上げました。週に一度イベントを主催し、クリエイティブシンキングを養うグループディスカッションを行っていました。僕が高校を卒業するタイミングで団体は閉じたのですが、それまで毎週開催していましたね。
教育団体を立ち上げようと思われた背景が気になります。
中学・高校の体験から、空気の問題は「十分な知識がなく発言したくても何も言えないことが原因なのでは」と思ったんです。教師と生徒、上司と部下のように、立場の違いがあることでどうしても従順になってしまうように。ならば、一人ひとりが知識を持つことで、空気に左右されない意思決定や発言が少しはできるようになるのでは、と。
なるほど。
そこで、グループディスカッションは社会問題をテーマに扱うこととし、イベントの最後は、その日の感情をレゴブロックで表現する時間を設けることにしました。
ですが、イベントを複数回開催するうちに「僕が今やっている教育では、空気の問題を解決することはできない」と悟ったんです。
それは一体なぜなのでしょう。
リピーターさんの様子を見ていると、イベント参加直後は変化しても1ヶ月後にお会いするとイベント参加前の姿に戻っていると感じることが多々あって。当たり前ですが、彼らが所属するコミュニティはここだけではありません。学校や家庭、部活動など様々です。
つまり、たった一つのコミュニティで空気を変えることには限界があり、当時の僕がやっている教育は単一的な解決策でしかないのだと気付いたんです。教育を通して本気で空気を変えたいのであれば学校を創設するくらいでないと……。でも、当時の僕は学校を創りたいとまでは思えなくて。こうして、僕が高校を卒業するタイミングで教育団体を閉じました。
黍田さんは、高校卒業後すぐに新たな挑戦をされていますよね。なんと、高校卒業後の進路を決めず、海外留学されたとか……!
そうなんです!フィリピンへ1ヶ月半ほど留学に行きました。結果的に、この時の経験がリスポの哲学に繋がるとは思いもしませんでしたが。帰国後はやはり「空気にまつわる研究をしたい」と思い、都内私立大学を受験して入学しました。
思い切った決断をされましたね。フィリピンを選択されたのはなぜですか?
発展途上国を訪れたことがなく、この目でリアルを確かめたかったからです。当時の僕の貯金額を考えると、フィリピン一択でした。
現地では、語学学校に通いながら炊き出しなどのボランティア活動に参加しました。そこで目にしたのはストリートチルドレンの姿です。お墓に住んでいる子どもたちも多く、彼らにとっての排泄所は近くの川。そこら中に異臭が立ち込めており、発展途上国のリアルを感じざるをえませんでした。
なんと……。
ですが驚くべきことに、ストリートチルドレンの多くは笑顔いっぱいに毎日を過ごしていて。僕はこの時あることに気づきました。本当の幸福はお金じゃないのでは、と。
フィリピンと比べると日本の生活水準は高いですが、人々が幸福度の高い生活を送っているかと言われれば疑問符がつきます。僕は、満員電車の中で疲れた表情を浮かべる社会人を何人も見かけたことがあります。人間の幸福とはなんでしょうか。幸福度の高さと資本の有無は必ずしも比例していないのでは、と感じた経験でしたね。
「人間の幸福とは何か」とは、深い問いですね。帰国後はどのようなことに取り組まれたのでしょうか。
かねてより問題視していた「空気」と向き合うべく、2020年4月に法人向けのコーチング事業を始めました。空気の問題の根底には、「人の気持ちをどのように汲み取るべきかわからない」感情の存在があると思ったんです。
ついに、事業作りに踏み出されたんですね!
はい。高校生の頃に教育団体を立ち上げているとはいえ、法人向けの事業に挑戦した経験はありません。当時は事業作りについて相談できる相手もいなかったため、一人で考えながら手探りで進めていきました。
ありがたいことに2社の企業さんの協力を仰ぎテストしましたが、事業のサステナブル性がないと判断。撤退を決めました。実は、撤退を決めたのはJOBS CAMPに参加している最中だったんですよ。
掴んだ機会は獲りにいく。JOBS CAMPは僕の変革の起点
そうだったんですか!JOBS CAMPはどこで知ったのでしょうか。
当時参加していたとあるコミュニティで知りました。参加者の一人がJOBS CAMPについて投稿していたんです。それを見て気になり、すぐに投稿者にメッセージを送りましたね。
JOBS CAMPへ参加を決めたのはなぜだったのでしょうか。
正直「参加する」ことに関してはあまり深く考えていませんでした。量と質で考えると、何事も最初は量をこなすことで質に転換すると思うんです。だからこそ、JOBS CAMPのような新しいことに挑戦できる機会があれば、選ばず全て参加するようにしていました。あれこれ考える前にとりあえずやってみる。楽観的な性格も功を奏していますね(笑)。
JOBS CAMP1期生として参加された黍田さんですが、正直、参加に対する不安はありませんでしたか。
全くなかったですね。JOBS CAMPは約3ヶ月間のワークショップ。プログラム期間中は毎週異なる若手起業家が講師として登壇してくださるのですが、僕にとって誰が登壇されるかは重要ではありませんでした。「掴んだ機会は獲りにいく」一心で参加を決めました。
JOBS CAMPへの参加を通して、財産になったことはありますか。
起業家としてのあり方を学んだことですね!特に、タイミー社の小川代表の「自分のロールモデルをつくれ」というアドバイスが心に残っています。どのような起業家になりたいのか、そのためには誰をロールモデルとすべきか、どうやって理想を目指すのか、理想までの段差はどれくらいあるのか……。一つひとつは小さなことかもしれませんが、起業家としての姿勢を学べたことは大きな財産になりました。
JOBS CAMPに参加する前と後で、気持ちや行動の変化はありましたか?
ありました!すぐに何か変化が起きたわけではありませんが、今振り返ってみればJOBS CAMPが転機となった出来事がたくさんあります。小さなことで言えば、JOBS CAMP中に学んだメールの送り方から、大きなことで言えば事業のピボットに至るまで。僕がスタートアップの世界に足を踏み入れるきっかけをくれたのはJOBS CAMPでした。成長に繋がっていると感じているからこそ、後輩にも自信を持ってJOBS CAMPを紹介したくなります。
黍田さんはJOBS CAMP参加中と参加後の2度、事業をピボッドされていますが、その判断に至った経緯を教えてください。
JOBS CAMP参加から1ヶ月後に初めてのピボットを決めました。2020年10月頃のできごとですね。法人向けのコーチング事業にはサステナブル性がないと判断し、メンタルヘルスにまつわる事業へ路線を変更しました。
メンタルヘルスの事業とは、具体的にどのようなものだったのでしょうか。
色と声の掛け合わせで個人のメンタルをチェックができる仕組みを編み出しました。現在主流とされているメンタルヘルスサービスの多くは、「すでにメンタルの支障を自覚している方」を対象としたものがほとんど。ですが、例えばうつ病は3分の1が再発するとも言われるほど慢性化しやすいんです。
つまり、自覚症状が現れる前に誰かが手を差し伸べることができれば、空気の存在に苦しむ方を救うことができるかもしれない。
なるほど。
そこで、潜在層をターゲットとした事業を友人と2人で創りました。実は、事業立ち上げから2ヶ月後には、ありがたいことにVCの方から出資のお話もいただくことができるまでになっていたのですが……。
事業立ち上げから3ヶ月後、2021年1月に撤退を決めました。
なんと……!
メンタルヘルス事業で僕たちが救いたい人を本当に救いきれるのか、自信を持てなかったんです。最後まで僕自身を信じきれなかった。そんな中途半端な気持ちで事業を大きくするのは違うと思ったんです。
そんな経緯があったんですね。正直、その後のご自身の進むべき道に悩んだ瞬間はありませんでしたか?
ありました。めちゃくちゃ悩みましたね。大学在学中だったのでとりあえず空気にまつわる勉強はできると思い、研究家になる道や公務員になる道を考えたこともあります。でも、ある時ふと思ったんです。今の僕は人として全然おもしろくない、と。
中学生の時、救いたい人を救えなかったあの時の僕と同じでした。人の意思決定を誘導する空気の存在が問題だとわかっているのに、それなのにまた見逃すのかと思いました。事業を2つ潰した経験があるからこそ、諦めきれない気持ちに火がついて。
最後は自分を信じ続けられるかどうかだと、この時思いましたね。
黍田さんが起業家以外の道を考えた瞬間があったとは知りませんでした。
実はそうだったんですよ(笑)。僕は起業家の道を選びましたが、決して人に起業家になることを無理に薦めようとは思わないですね。
僕は、起業家と研究家の違いは「解決」と「解明」だと思っています。つまり、研究家になった僕ができることは解明するところまで。僕が実現したい世界は、目の前の問題を解決することで実現されると思い、起業家の道を選びました。
起業家になる道を周りの人におすすめしない理由はなんですか?
めちゃくちゃしんどいことだらけですもん、起業家って。JOBS CAMPの講義で、Beyond Cafe代表のカルさん(代表の愛称)もこうおっしゃっていました。
事業がなくなる瞬間は、ファンがついてこなくなったときでも売り上げが立たなかったときでもない。起業家がファイティングポーズをとるのをやめた瞬間だ。
当時の僕は「なんかかっこいいこと言ってるな〜」と思いながら聞いていたのですが、事業作りを始めてから1年を経て、本当にそうだなと思うんです。でも、本当に突き詰めたいと思えることがあるんだったら戦い続ける道を選ぶのもありだと思いますね。
3度の事業作り。何度挫折しても諦めたくない夢に向かって
深いですね。紆余曲折を経た黍田さんが3度目の事業開発となるRespoに辿り着くまでに、この後何があったのでしょうか。
空気にまつわる様々な研究論文を読み漁った結果、日本人が「空気を読みがち」な帰結点はは自己効力感の低さにあると見えてきました。つまり「自分ならできる」という感情が諸外国と比べて少ないといえます。僕はこれが、日本人一人ひとりの経済力や社会的地位に起因して引き起こされていると考えました。
そんなデータがあるとは。
とはいえ、今の僕にいきなり日本の経済の仕組みを変える力はありません。ですが、何か役に立てることはないか……。経済力に乏しく、社会的地位も低くならざるをえない方はどんな方かと考えた時、非正規労働者の方だと思ったんです。
そこで、実際に僕も派遣社員として2週間働いた結果見えてきたのは、50代の派遣社員の方が30代の正社員の方に罵倒されている様子でした。年代関係なく、社会的地位が理由でこんなにも扱いが変わるのかと、すごく悲しい気持ちになりましたね。
なんと……。
非正規労働者の方々の存在や価値を肯定できる方法はないだろうかと考えた時、例えば飲食店やタクシー会社であれば、お客さんからスタッフへ直接メッセージを遅れる仕組みがあったらいいのではと思ったんです。既存のアンケート記入のような形式ではなかなか広まらないことを考えると、何か別の方法が必要です。
そんなとき、ある方がチップ文化について話している様子を耳にし、投げ銭市場を調べてみたところ右肩上がりに伸び続けていることが判明。こうして、2021年3月にRespoが誕生しました。
黍田さんの今後の目標はありますか。
将来的には、RespoをただのデジタルチップサービスではなくHRサービスにしたいと考えています!具体的には、人事評価にまつわるサービスへ。中小企業を対象として接客業に特化したサポートを生み出すことで、非正規労働者が正社員を目指す架け橋となれる事業にしていきたいですね。
ご自身の原体験を胸に、目標の実現に向けて進み続ける黍田さんが大切にしている考え方や指針はありますか?
「日常の五心」を大切にするよう意識しています。日常の五心とは、「日常的に5つの心構えを大切にしよう」という意味で、中学1年生の時の担任の先生が使っていた言葉です。その中でも、僕は2つの心が特に大切だと思っていて。
と言いますと……?
・「ありがとう」を伝える感謝の心
・「ごめんなさい」を伝える謙虚な心
僕は、この2つがあればある程度生きていけるとさえ思っています。Respoのブランドコンセプトは「気軽にありがとうを」なのですが、これは日常の五心からもインスパイアを受けているんです。「当たり前のことを当たり前に伝える」ことを常に心がけていますね。
JOBS CAMPの未来の後輩へ一言メッセージをお願いします。
皆さんへ伝えたいことが2つあります。
1つ目は、身近にいる人へもっと「ありがとう」を伝えてほしいです。僕は中学生の頃、近くにいる人を救うことができず、相手の転校によって「ありがとう」を伝える機会さえも掴むことができませんでした。これは、家族に対しても言えることです。
身近な人は、ある日突然いなくなり得ます。両親や友人、恋人などいつも身近にいることが当たり前になっている存在だからこそ、ふとした瞬間に「ありがとう」を伝えてほしいですね。きっとたった5文字でその人は、社会の温度は少しあったかく・優しい経済になるのでは、と思うんです。
2つ目は、どうか自分を最後まで信じ続けてください。僕はこれまでに2つの事業で撤退を経験し、Respoが3度目の挑戦です。その過程では、起業家とは違う道を歩もうかと本気で悩んだこともありました。ですが、僕が創りたい社会や幸せにいてほしい人のことを考えるとやはり夢を諦めきれず、事業を創り続けて、やっと資金調達ができるまでになれました。
起業家って、成功するまでは周りからの批判や嘲笑が耐えず、辛いことも多いんです。そんな状況でも絶えず戦えば、自分の信じる道を突き進んでいけば、いつか道は拓けると本気で思っています。
明日に怯える人生より、明日を切り拓く人生を送ってほしいですね。
本日はありがとうございました!黍田さんのさらなる挑戦を応援しています!
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